デザイン・モノづくりの本質と考え方。TIPSもたまに。

過剰な敬語はあなたのデザイン力を低くする

過剰な敬語、不適切な言い回し、重ねに重ねた謝辞などなど。

最近はTV、雑誌、ネットのいずれであっても、何を気にしてか余計な言葉を盛りに盛って過剰すぎる表現を、さも普通のように見聞きする。

その言葉は誰に対して、なんのために、何を恐れて選んだ言葉なのだろうか?あなたが伝えたい内容はきちんと伝わると本当に思っているのだろうか?

いくつかの例を。

「この度、新作を出させて頂きました」

「作品を作らさせて頂きました」

「イベントをやらせて頂きます」

「関係者の方々、ありがとうございます」

・・・違和感しかない。

いったい何が主体なんだろう。誰に向けての言葉なのだろう。どうしてそこまで自分を下に置いて言葉を発しているのだろう?

特に自らの作品を発表するのに「出させていただきます」はどう考えても変だ。

「出します」「出しました」でいいだろう。なぜへりくだる必要があるのか。自分の作品に自信がなく、世に出す物としてレベルがクオリティが足りてないと自分評価で思っているにも関わらず出してしまったことに後悔しているのだろうか?もしそう思っているなら買う人に、買おうと思っている人に失礼である。

または、「出したのでぜひとも買って下さい」という意味合いで自分を下に置いた場合であれば、「頂きます」ではなく「お願いします」となるはずだ。いずれにせよ、堂々とせず自信なさげに伝わってくる印象は物を作り売るという商売であるならマイナスにしなかならない。あなたがデザイナーやクリエイターであるなら、多大な時間を使い、考え、調べ、手を動かし、リトライを何度も繰り返した結果である「作品」なら堂々と自信を持って世に出し発表すべきである。どんな事であろうともへりくだって言うべきことではない。また、感謝の意を込めるのであってもそれはまた別の言葉を使うべきだ。

もうひとつ。

イベントなどで「関係者の方々・・・」と、壇上で言う人達もいるが、別にそれは今いうべきことなのだろうか?というのを思う。感謝の気持ちを、イベントに来場した人々だけではなく、表舞台には出ないが多くのスタッフがおりその人々にも脚光を少しでも浴びてほしい、知ってもらいたい、なによりも今感謝の気持ちでいっぱいであるという心情はわからなくはないが、イベントが現在進行系の壇上で言うべき事なのだろうか?イベントが終わってから控室や打ち上げの場で言えば良いことだ。それで感謝は十分に伝わる。

ではなぜ、壇上で言う必要があるかというと「自分のイメージアップ」という戦略でしかない。掘り下げて意味を見つけるならそれ以外にはない。舞台裏で言えば良いことを表で言う意味なんてそれくらいである。それに壇上で言葉を発しているのであれば、伝えるべきは目の前いる来場者だけに向けた方がずっと伝わることだろう。例外の事例はあれど、基本的には場違いな言葉である。

さて、もう一つ。

あなたは仕事のメールに丁寧な言葉を重ねすぎてないか?

作業時間30分の事柄を伝えるために、メールを書くだけで30分以上かけていないだろうか?下書き推敲見直し。つまるところ本文1割。過剰に丁寧な単語8割。定型文1割といった内容になっていないだろうか?

古来よりお手紙は冒頭の簡単な挨拶から、本文、締めの言葉と1:8:1くらいな割合で構成されているのに、現代の業務的なメールはそれが逆になっているように思う。なので、本来伝えなければならない大事な事柄がすべて無駄な文章に埋もれてしまい伝わってこない。さらに間違った敬語や重ねすぎている丁寧な言葉で、違和感が残るため印象はマイナスだろう。

メールを打つ時間も内容も何もかもが無意味となっている。本当に残念な事柄だ。

これがデザインにどう影響するか?もう、おわかりの人もいるだろう。

無意味で装飾過多な駄作を無駄に時間をかけて作っていることに他ならない。意味のない飾り、色使いが多く視認性も可読性も低く、散らばったレイアウトで本末転倒な構成。そんなことになっている。

「伝えることを的確に表す」ことがデザインの本質なのに、伝わっていない文章を時間をかけて書いているということは、まったくもって無駄であり自らの無能をさらしていることになる。メールからそれらを読み取ってデザイナーやクリエイターを評価する人も稀だろうが、潜在的に良いイメージは持たれないだろう。

あなたが、デザイナー、クリエイターなどモノづくりを生業としているのであれば、あなたが書く文章、口にする言葉も「デザイン」してほしい。メールであれば簡潔に要点のみであれば十分。過剰な挨拶は不要だし誰も読んでいない定型文である。もしそれで気分を害するような客先であるならそもそもそんな客先とは仕事を切ったほうが利益があがるだろう。メールの文章にケチを付ける人は作り上げたものに対しても絶対にケチをつけまくるのだから。

最後に、この長い文章を要約すると

  • 自分の作品は堂々と
  • すべてをデザインする

この2点だけ。

日本語は、難しいね。