Adobe IllustratorCCやPhotoshopCCはAdobeのクラウドサーバーから直接ファイルを保存・開くことができる機能「Adobeクラウドドキュメント」を大雑把に紹介するとともに、筆者が感じたメリット・デメリットを書く。使うのを悩んでいる人の参考になれば良いと思いつつ、結論から言うと使うことにデメリットは無いのでお試しのファイルでも良いからまずは使用してみることをオススメする。
使用感が合わないならローカルで運用すれば良いだけなので、クラウドだからと言って肩肘張る必要はない。「ちょっと面白いフォルダに保存する」程度のことである。
簡潔な紹介になるので、詳細な仕様などは各々調べて欲しい。
ファイルを保存/開くはローカルとあまり変わらない感覚
ローカル環境で「どこのフォルダに保存するか」ということを選ぶのと同じ感覚で、保存先が「クラウド」になるだけだ。ファイルを開くのも同様。
ファイルを開くの初回だけは少し時間がかかるが、2回目以降からは素早い(ネットワーク環境にもよるが)。初めて開くファイルはローカルにファイルをダウンロードしてから開いているようだ。そのダウンロード時間が少しかかる程度。2回目からはクラウド上のファイルと差分だけをやり取りしているのか初回より早いイメージ。いづれにせよ、ローカルにあるファイルを開くのと同じくらいの感覚でファイルを開けるのはありがたい。
保存も同様。初回は少し時間がかかるが、2回目からは早い。場合によってはローカルより早いかもしれない。
通信が無い場合は一時的にローカルに保存され、通信環境が復活したらファイルを自動的にアップロードする仕組みなので必ずしもネットワークを繋ぎっぱなしにしなくとも良いのは魅力だ。ただし、ネットワークが不安定な場合は注意が必要。ファイル転送途中で通信状況が悪いとエラーになったりファイルが破損する原因となるので不安定な場所などではいっそのことオフラインにて作業するのが良いだろう。
ただし、重たいファイルは注意が必要。保存も開くことも時間がかかり動作が不安定になりがちなので、重たいファイルはローカルの運用が良いかもしれない。
ファイルのバージョン管理が簡単安心!
現状ではブラウザ画面でしか操作できないが、ファイルのバージョン管理がとても楽。自動生成というか保存するごとに履歴が残されており、いつでも過去のバージョンに戻すことが可能。
また、重要なバージョンはラベルを付けて保護しておけるので管理も容易でわかりやすい。
ブラウザだけではなく、Creative Cloud Desktopアプリ上でも操作できると更に便利なので今後のアップデートに期待したいところ。
同じファイル名の保存にはひとクセあり
同じファイル名をクラウド上に保存する場合、「上書き」とはならないので注意が必要だ。
例えば、クラウド上に「TEST.psd」というファイルがあり、「別名保存」で「TEST.psd」をクラウドに保存するとしよう。
ローカルに保存なら「上書きしますか?」というようなメッセージが出て、既存のファイルを書き換える動作となるが、クラウドドキュメントの場合は「別のファイルとして保存」される。上書きしますか?というようなメッセージはなく、クラウド上には「(1)」というような数字が自動的に付加されて別ファイルとして保存される。
これはバージョン管理機能との兼ね合いでこうなっているのだろう。別名保存で同名ファイルに上書きは出来ない仕様なので注意が必要だ。上書きは「保存」から行うように徹底しよう。
ファイルの詳細がよくわからない
場合によっては重大事項。クラウドドキュメントに保存されているファイルの詳細な設定がよくわからないのだ。
特にIllustratorを使う人は保存時に「ICCプロファイルを埋め込む」をON/OFFしている事だろう。プロファイルのある無しで結果がかなり違うのだが、この指定が無い。互換PDFのチェックもない。バージョンも不明。とにかく保存時の「詳細オプション」のようなものが無いので、保存形態がよくわからないのだ。
予想だが、クラウドドキュメント形式はローカルとは違う状態で保存されているようだ。ICCプロファイルなどの環境による違いがあるような設定はそもそも保存されていないのかもしれない。純粋にIllustrator・Photoshopとしてのデータのみを内包しているのかも。あくまでも予想なので詳細は各々で調べてもらいたい。
Adobeクラウド上から直接印刷データなどを入稿するのは避けたほうが良いだろうと思う。色味などの不具合が生じる可能性は否定できない。便利で楽しいクラウドドキュメントだがまだまだ発展途上であり、各会社も対応していないケースは多いだろう。現状では「ファイルの保存先の1つ」として使う程度に留めておくことが良さそうだ。
拡張子が変わる
クラウドドキュメントに保存(変換)すると、拡張子の末尾に「c」の文字が付加されて拡張子がかわる。クラウドドキュメント形式ということがひと目で分かる。
「保存しないで閉じる」ということができない
クラウドドキュメント形式だと「ファイルを閉じるときには必ず自動的に保存される」という仕様となっている。「保存」を押さなくとも未保存の場合は閉じる際に自動的に保存される。確認のメッセージは無い。
場合によってはこれがネックになる人もいるだろう。
「ちょっと試しに変更してみて駄目そうなら保存しないで閉じれば良い」という使い方が出来ないのだ。クラウドドキュメントはバージョン管理されているので「戻る」ことは可能だが、ブラウザでadobeドキュメント専用ページを開いてバージョンを確認して戻さなければならない。バージョンは任意で名前を付けない限りタイムスタンプでしか判断できず、場合によっては「どれが戻したいバージョンなのか?」というのが分かりにくい。
バージョン管理に依存せず、お試し的な感じで編集したいと思ったらローカルに保存するか、別名でクラウド上に保存しなければならず、いずれにせよひと手間かかることとなる。
自動保存はメリットもあるが、個人的には未保存で閉じようとした場合はローカルのときと同じくメッセージが出て保存するか否かを選択できるとベストだ。
それでも楽しいクラウドドキュメント
デメリットも不明瞭な点もあるが、それ以上に楽しさがあり、楽なのがクラウドドキュメント。使わない理由は特に見当たらない。会社と自宅両方で作業する人や、オープンオフィス、ノマドワーカーなど作業場所や機器などが特定していない人にはとてもオススメ。
使ったら実感できると思うが、ファイル管理はローカルよりやりやすいと筆者は感じている。
何よりも、別環境、別OSでの差を意識せずに作業を可能とするのはとてもストレスがない。
筆者は職場でWindows、自宅でMac OSという環境だが何も気にせずにファイルを共有できるのはとても便利である。
iPad版のIllustratorやPhotoshopなどアプリ版との連携も可能で、これから先も機能や連携は充実していくだろうと予想ができるクラウドドキュメントは使っていくに越したことはない。
ただし、使えば使うほどにクラウドの容量は消費していくのは楽しみとのトレードオフだ。Illustratorはそれほどファイル容量は大きくないがPhotoshopなどのラスターデータはどうしてもファイル容量が大きくなる。
adobeのクラウドストレージ追加容量は契約しているプランよって価格は変わるがiCloudやgoogleONEなどと比較してもそれほど値段に差はない。保存できるファイルが限定されるストレージだけども、足りなくなってきたら考える程度でよい。